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スタッフブログ
こころを育む
こころを育む 親子の時間〜感情はどうしたらコントロールできるの?〜
- すぐにカッとなって兄弟で喧嘩してしまう
- 大人が注意しても言うことを聞かずにイライラ…
- 子どもが、泣きながら怒って訴えるとき、つい大人もカッとなって怒鳴り返してしまう…
- 最近は、外出する機会も減り、家に一緒にいる時間も長くなりがち。
大人も子どももどう感情をコントロールしたらいいのか悩んでいる方もいるのではないでしょうか?
この一見やっかいな、『感情』
感情は目に見えず、気分によって一時的に生じるものと捉えてしまい、その時の相手の態度や言葉についつい反応してしまいます。
しかし、感情は人にとって思考や意思決定を導く重要な役割を持っており、なぜその感情が生まれたのかしっかり向き合ってく必要があります。
そして、子どもにとって感情を上手くコントロールすることは、これから社会性を獲得していく上でとても大切になってきます。
赤ちゃんには感情はあるの?
では、わたしたち大人が今、持っている感情は、赤ちゃんに生まれ持って備わっているものなのでしょうか?
実は、感情も体や言葉の発達と同じように、環境や周囲の人との関わりのなかで相互に影響して発達していきます。
感情は、『喜び』『悲しみ』『怒り』『驚き』『嫌悪』『恐れ』といった感情が基盤となっていますが、この感情全てが赤ちゃんに備わっているわけではありません。
では、生まれてからどのように感情が生まれてくるのでしょうか。
3ヶ月頃までに、『快』『不快』といった2つの感情に分かれます。
たとえば、お腹が空いた時は泣いて『不快』を訴え、お母さんに抱っこしてもらい、お乳を飲ませてもらうことで落ち着くようになります。
6ヶ月頃には、自我と個性が発達し始め、基本的な6つの基本感情、『喜び』『悲しみ』『怒り』『驚き』『嫌悪』『恐れ』が成立していきます。
たとえば、基本的な要求にお母さんが応えてくれないと不満に感じ、泣くという行為がおこります。
他には、周りのものに興味をもって触って変化が生じると、『驚き』という感情が生まれます。
1歳頃には、言葉が発達して情動表出によって感情を伝えることが少なくなってきます。
親の表情をよく見て状況を判断するようになり、怖いことがあると親のもとにいって、ぎゅっと抱きしめられることで安心感を得たりします。
2〜3歳頃には、徐々に感情をコントロールすることを学んでいきます。
この頃は、悲しい・楽しいといった自分の気持ちと、原因となった出来事を結びつけて考えられるようになり、感情がコントロールでき始めます。同時に、『誇り』『恥』『罪悪感』といったより複雑な感情が芽生えてきます。
4〜5歳頃には、相手の気持ちを理解できるようになります。
さらに言語が発達することによって、自分の気持ちを相手に伝えることができるようになり、園での集団生活でお友達とのケンカや仲直りなどを通して感情の抑制も含めたコントロールを学んでいきます。
このように、生まれたばかりの赤ちゃんの感情は未分化なものでありますが、成長とともに分化されて、『個人の感情』として発達していきます。
感情を上手くコントロールするには?
子どもの気持ちをくみ取って、こどもの気持ちを代弁する。
感情は脳の扁桃体と言う部分が発火点になっています。
扁桃体は快・不快の源ですので、恐怖や自分の嫌なことを感じると、まず発汗や心拍数など体の変化が現れ、感情が出てきます。一方で、その症状を抑える機能も脳にあります。
例えば、お母さんが自分に対して怒っていると、『お母さんは、僕が◯◯したから怒ったんだ』という論理的な思考で自分の感情を抑えることもあるでしょう。
しかし、就学前や低学年のこどもは、この論理的思考はまだ備わっていません。ですので、まずは興奮したら一旦深呼吸をする、時間を空けるなどしてから、大人が子どもの気持ちを聞き、一緒になってどうしたらよいのか考えることが必要です。
感情を育むには、まず認知機能を育てる。
感情が生まれる前には、『認知』が行われています。
赤ちゃんは、生後2〜3ヶ月から大人の表情を見て模倣します。
そのあとも、大人や周りの子どもと一緒に、見たり、聞いたり、コミュニケーションをとりながら認知とともに感情が育っていきます。
この認知は、視覚や聴覚の情報、言語理解、記憶、推論など様々な機能が基盤にありますが、この認知機能に問題があると、すぐに『キレる』といった感情表出につながることもあります。
これは、相手の表情をしっかりと見ないまま、相手が怒っていると勘違いしてしまう、相手の気持ちを推し量ることができないまま手が出てしまう、などが起こることがあります。
また、感情はその後の記憶などの認知処理過程に影響を及ぼすとされています。例えば、楽しい出来事は楽しい気分の時に、悲しい出来事は悲しい気分の時に記憶を再生(思い出す)しやすくなります。
子どもの特性を理解する
感情のコントロールは、年齢によっても差がありますが、もちろん個人差もあります。
個人差というのは、2つの側面があります。
一つ目に、パーソナリティ、つまりは性格です。
性格は、遺伝要素もありますが、環境にも影響されます。
感情豊かだけど、すぐにカッとなってしまう子、自分の感情を抑えすぎてしまう子、過度に神経質になってしまう子…感情の表し方は子どもによって様々です。
お子さんの性格を知った上で、その子が本当はどんな感情を持っているのか、考えてみましょう。
二つ目に、発達に遅れがあったり、偏りのあるお子さんです。
特に自閉症スペクトラムやADHDのお子さんは、周りの音などの感覚に敏感でイライラしやすくなって感情をコントロールできないことがあります。
また、言葉の発達がゆっくりなお子さんの場合、うまく感情を表現できないこともあります。
その時は、静かな場所で一人になって落ち着く場所を作る、顔の表情カードなどのツールを用いて感情を視覚化することで、自分の気持ちを相手に伝える機会を作ってあげましょう。
このように感情は単純な様で、とても複雑に作り上げられています。
お友達や大人との関わりなしでは成立してこなかったのです。
そして、感情豊かな人の方がコミュニケーションスキルにおいて共感する能力に優れているとも言われています。
これからは子どもの感情に丁寧に向き合い、『喜び』『悲しみ』『怒り』『驚き』『嫌悪』『恐れ』だけではなく、例えば…
- 一生懸命頑張ったのに、試合に負けて『悔しい』
- 家族と一緒に過ごせて『幸せ』
- 好きな子に自分の気持ちを知られて『恥ずかしい』
- あの子は自分より成績が良くて『羨ましい』 などなど
さまざまな経験とともに、いろいろな気持ちに気づき、どんどん感情を育ててあげましょう。
重い障害があるお子さんでも、どんな性格のお子さんでも、何歳になっても、生きてきた分だけ感情は育っているはずです。
日々の経験を通して新たな感情が芽生えること、つまりは感情の発達そのものが『感情のコントロール』を育んでいるのかもしれませんね。